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「省エネ改修ラベル」10月開始へ 新築ラベルとの差を明確に

2024年3月29日

国土交通省は3月27日、「第6回建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」を開き、既存建築物における省エネ性能表示について検討を行った。4~5月頃にラベルデザインを検討し、告示・ガイドラインの改定案を制作。6~7月頃に関係団体などへの意見照会やパブリックコメントを経て、告示・ガイドラインを改定する。ラベルの発行開始は10月以降を予定している。

4月1日から新築建築物の販売・賃貸時における省エネ性能のラベル(仮称・告示ラベル)の表示が努力義務となり、新築だけでなく既存建築物でも、全体計算により省エネ性能が評価されている物件については、同じラベルを使って省エネ性能の表示ができるようになる。一方、今回検討中のラベルは、前述の「告示ラベル」による建物全体の省エネ性能表示はできないが、省エネ性能向上に資する改修部位(断熱・設備など)を示すことができる「改修部位ラベル」(仮称)。このラベルを使って、「窓のみ」「太陽光発電のみ」といった部分的改修の情報表示が可能となる。

この日の検討会では、「告示ラベル」と検討中の「改修部位ラベル」の使い分け、「改修部位ラベル」の表示対象、ラベルのデザインなどについて議論した。このうちラベルの使い分けについては、ラベルが複数存在することで消費者が混乱する可能性もあることから、それぞれのラベルの用途を明確化することとした。

例えば「改修部位ラベル」には、▽住宅の省エネ性能向上に資する断熱・設備仕様など、断片的な情報のみを表示▽4月1日までに建築された既存住宅で、建物全体の省エネ性能を把握していないものが対象▽「告示ラベル」との併用を避ける▽現状・実態を反映させるため、過去に表示したラベルは再使用しない―などのルールを定める。また、表示内容は自己申告によるものとなるため、現況と異なる表示がされる可能性もある。そこで社会的に大きな影響を与えるような虚偽の表示については勧告を行う。一方、表示していないことについての勧告は行わないこととする。

「改修部位ラベル」案と「告示ラベル」の違い

「改修部位ラベル」案と「告示ラベル」の違い

ラベル発行のタイミングについては、小規模な改修時に「改修部位ラベル」、大規模なリノベーション工事時には「告示ラベル」を発行することなどを想定している。また、最終的には「告示ラベル」に統合することも念頭に置き、引き続き「改修部位ラベル」のあり方について検討する。

改修部位に空調(暖冷房)を追加

ラベルに掲載する内容については、①改修部位の改修時期(年月)、②改修部位(設備)とその性能、③(設備に不具合があれば)不具合の内容―を予定。国や自治体による支援策や関係団体の取り組みとの連携を推進するため、講習を受けた有資格者が現状確認を行った上で発行したものであるとの一文を付け加えることも想定する。

改修部位については、「窓」「給湯器」「外壁などの断熱」「ドアの断熱」「節湯水栓」「高断熱浴槽」「太陽光発電設備」「太陽熱利用」「照明」に、前回の検討会で提示された「空調(暖冷房)」を追加。「窓」は、省エネ基準の仕様基準に定められた熱貫流率に適合するものを対象とし、沖縄県のみ日射熱取得率への適合を求める。さらに主たる居室のうちリビング・ダイニングの改修を必須とする。「太陽光発電設備」は、供給される電気が住宅で使用できるものを対象とする。その他、改修部位ごとに性能の要件を定める。

ラベルのデザインについては、各部位のアイコンなどを用いて、視覚的に把握しやすいデザインとする考え。「告示ラベル」との違いを明確にするため、モノトーンを基調として改修部位のみをカラー表示にする。

「改修部位ラベル」案と「告示ラベル」のデザイン比較

「改修部位ラベル」案と「告示ラベル」のデザイン比較

同議案について、会合に出席した委員会からは「アイコンがある方が目立つため、告示ラベルよりもさらにトーンを抑える必要がある」「外壁断熱は部分ではなく、全体計算し直して表示すべきものではないか」「改修をしなくても、最初から良い設備を搭載した物件もある」「仲介業者が虚偽のラベルを販売業者などから託された場合はどうするのか」などの意見が出た。

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