
企画・開発元紹介
インタビュー
[防災グッズ]人気の理由は
「女性目線」と「妥協なし」の商品開発にあった!

「東日本大震災」や「熊本地震」などの震災や、度重なる台風被害をきっかけに、災害対策への関心は高まっています。「自宅に防災グッズを用意しなくちゃ」と考えるのはもはや当たり前となり、最近では「車に防災グッズを用意しておく」という意識の変化が現れています。
そこで防災グッズの老舗であるファシル株式会社にお邪魔し、最新の防災グッズについてお話を聞いてきました。

[お話を聞いた人]
ファシル株式会社
代表取締役
八木法明さん
1975年創業、防災頭巾の企画・製造からスタートしたファシル株式会社の2代目代表取締役。安心・安全な防災用品の研究・開発、販売を手がけている。趣味は子・孫との「3世代キャンプ」。アウトドアでの体験も商品開発の鍵となっているそうです。

[お話を聞いた人]
ファシル株式会社
代表取締役
八木法明さん
■女性スタッフが9割!女性が活躍するファシル株式会社
─今日はよろしくお願いいたします。まず、ファシル株式会社の自己紹介をお願いいたします。

忘年会のときの様子。ファシル株式会社では、女性が働きやすい職場環境に力をいれて経営しています
私たちは、防災用品の企画・製造メーカーです。創業者は私の母で、創業時から、スタッフの9割は女性という女性の活躍に支えられている会社です。
女性ならではの気遣いやアイデアが商品のなかに生かされて、2018年には車載用の防災グッズ「ボウサイブロック for CAR」(以下、ボウサイブロック)がグッドデザイン賞を受賞することができました。確かな品質はもちろんですが、 “見た目のおしゃれさ”にもこだわった防災グッズを心がけています。

忘年会のときの様子。ファシル株式会社では、女性が働きやすい職場環境に力をいれて経営しています
─ファシルさんの商品を見ると、今までの防災グッズのイメージとは一線を画すデザインですよね。
まずは「暮らしに溶け込むデザイン」をつくることを大切にしています。デザインは社内のデザイナーが担当していて、いくつかのデザイン案のなかから「こっちのほうがいいよね」「こうしたらもっとよくなるんじゃないかな?」とスタッフたちが意見を出し合って、最終的には社内投票で決めています。
─人気の秘訣は女性の活躍。間違いありませんね。
はい。普段バックに入れておいても違和感がないおしゃれなデザインは、万一の災害時でも、前向きな気持ちになってもらえます。このような考え方ができたのも女性ならではの感覚があったからですね。
ちなみに、ボウサイブロックは、軽自動車にもトラックにも、営業車にもファミリーカーにもなじむようにデザインをしました。黒を基調にしたパッケージデザインですので車内に置いても主張が少なく、営業車に乗せる場合は会社のシールを貼るなどしてご利用になっている会社様もいらっしゃいます。

ボックスのティッシュペーパーよりも一回り大きなサイズで、ツールボックスを彷彿とさせるデザイン。

「ボウサイブロック for CAR」を車に積んだ様子。コンパクトなサイズ感にとことんこだわった。
■「車に防災」をすることで地域の防災拠点として活躍
─ボウサイブロックの、企画・製造のきっかけを教えてください。

「熊本地震で多くの人が車中泊の問題を抱えていたことから、車載用の防災グッズ・ボウサイブロックを考えました」
きっかけとなったのは、2016年の熊本地震で「車中泊」が注目されたことからです。当時は車の中に防災グッズを常備している人は少なく、いざというときの備えの大切さを痛感したとニュースで拝見いたしました。
このことをヒントに、防災用品の販売メーカーとして考えたのが車載用防災グッズのボウサイブロックでした。

「熊本地震で多くの人が車中泊の問題を抱えていたことから、車載用の防災グッズ・ボウサイブロックを考えました」
─地震時の車中泊以外に、具体的な利用シーンとして考えられるものはありますか?
ここ近年、異常気象によって自然災害がぐんと増えましたよね。豪雪、台風、大雨による冠水など、実際に車が動かなくなってしまった経験がある方もいるのではないでしょうか? さらに、災害とは言えなくても日常的に起こりうる渋滞も防災グッズの利用シーンとして考えています。特に携帯トイレは車が立ち往生したときには欠かせないものです。
ですので、普段から利用する営業車や、トラック、レンタカーなど、「仕事で使う車」こそ、「備えあれば憂いなし」ということから取り入れてもらっている会社が多くあります。

渋滞中、トイレに行けないときに防災グッズの携帯トイレはお守りのような存在に。

山登りやアウトドアのエチケットとしても携帯トイレは便利に利用できる。
─車に防災グッズを積むことでドライバーを守ることができて安心ですね。
「LIXIL Good Living 友の会」の会員様の場合は、営業車にお施主様が乗ることもあるでしょうし、それから将来のお施主になりうる近隣住民の方たちとのつながりも大切にされていると聞きます。
車に防災グッズを乗せていることで、そういった「地域の誰か」が困っているときも、手助けできるようになり、小さな防災拠点としても役に立つことができるでしょう。
■厳選された防災グッズ12点をセットにしたボウサイブロック
─それではこの「ボウサイブロック for CAR」のなかに、どのようなグッズが入っているのか教えてください。

厳選!12点のラインナップ
ボウサイブロック 定価 ¥6,800(税別)
→特別価格 ¥5,900円(税別)
・写真後列 左から
ポンチョ de トイレ[大小便兼用]/ハンディートイレ[小便用]/3WAYポンチョ/緊急用ホイッスル/使い捨て簡易ライト/伝言カード・防災ペン
・写真前列 左から
反射材付きグローブ/常備用カイロ/3M社製 防塵マスク/ポケットティッシュ/7年保存クッキー/7年保存水
このボウサイブロックの中には、厳選された12点を詰め込みました。
個包装の素材にもこだわりがあるんですよ。一般的な防災グッズのパッケージはビニール製のものがほとんど。しかし、当社ではアルミでつくって長持ちするよう考えてあります。
また、車は温度変化が激しく、夏場には60度近くになることもある場所です。車内に保管しても品質には変わりがないように研究しました。
─12点のなかでも、さらにおすすめの5点はどちらになりますか?
それでは特に人気のある5商品を紹介いたします。
[1]ポンチョ de トイレ(大小便兼用)

使い捨てトイレ[大小便兼用]には、写真のようにすっぽりかぶるタイプのポンチョがついている。目隠しは必須アイテム。
まずは「ポンチョ de トイレ」です。こちらは和式の便器のようにしゃがんで使うことができます。ポンチョ付きですので、首に巻いてしゃがめば地面までかくすことができ、人目を避けて用を足すことができます。
この使い捨てトイレのなかには、水分を吸収するシートを通常の倍入れました。水分が漏れる心配が減り、後片付けも簡単になります。

使い捨てトイレ[大小便兼用]には、写真のようにすっぽりかぶるタイプのポンチョがついている。目隠しは必須アイテム。
[2]ハンディートイレ(小便専用)

実際に700mlの水を入れてみたところ、あふれることはなかった。水分は徐々にゼリー状に固まり、逆止弁がついているおかげで漏れてくる心配も少ない。
こちらは、容量700mlの携帯トイレです。国内に流通している携帯トイレのほとんどは容量500mlでしたが、それだと本当に我慢しているときはちょっと足りないことがあるんです。私もスタッフも試してみた結果、溢れる心配がないところで700mlで販売することにしました。
こちらの使い捨てトイレは、薄くてコンパクトですので、カバンにいれても邪魔になりませんし、車のダッシュボードに入れておくだけで「お守り」のような存在になりますよ。小さなお子様、高齢者のドライブなど、いつどこで渋滞に巻き込まれるかわかりませんので、この商品はすごく喜ばれています。

実際に700mlの水を入れてみたところ、あふれることはなかった。水分は徐々にゼリー状に固まり、逆止弁がついているおかげで漏れてくる心配も少ない。
[3]3WAYポンチョ

軽くてしなやかな素材を使い、素材がこすれる音を軽減。夜間でも安心な反射材付きで、防寒対策やレインウエア、目隠しとして活躍する。
①防寒対策、②レインウエア、③着替えやトイレの目隠しとして3つの使い方で利用できるポンチョです。アルミでできた一般的なポンチョはカサカサと音がして、意外と「うるさい」という報告があります。これでは避難所でのトラブルになりかねません。
ボウサイブロックに採用したポンチョはしなやかな素材を使って、静音性の高さを追求しました。防災色のオレンジは昼間目立ちますし、夜間でも安全なように反射テープが前後に入っています。

軽くてしなやかな素材を使い、素材がこすれる音を軽減。夜間でも安心な反射材付きで、防寒対策やレインウエア、目隠しとして活躍する。
[4]反射材付きグローブ

男女兼用のフリーサイズ。災害時だけでなく冬場の防寒や、アウトドアにもおすすめ。
軍手よりも頑丈な素材でできていて、フィット感とグリップ力に優れたグローブです。男女サイズ兼用で、スタッフ一同、何度もサイズ感を確かめながら企画したオリジナル製品になります。素材の肌触りもよく、細かいものもつかみやすいようにできています。
私は冬場の夜間、犬の散歩時に着用していますよ! 手の甲に大きな反射材がついているので、安全に夜道を歩けます。

男女兼用のフリーサイズ。災害時だけでなく冬場の防寒や、アウトドアにもおすすめ。
[5]伝言カード・防災ペン

車のダッシュボードにおいておけば、一時的に車を離れなくてはならない緊急時も所在を伝えることができる。
豪雪や冠水、地震などの災害時や、ガス欠、バッテリー上がりなどで車を離れなくてはならない時、この伝言カードに氏名と連絡先を記入してダッシュボードにおいておくことで、状況を相手に伝えることができます。この防災ペンはフロントガラスにも文字を書くことができ、雨に濡れても落ちません。(乾いた布で拭くと消すことができます)

車のダッシュボードにおいておけば、一時的に車を離れなくてはならない緊急時も所在を伝えることができる。
─細かいところまで気配りがあり、防災グッズ専門メーカーの鋭い視点に驚きました。
いい商品があれば、スタッフ一同で吟味してそれを採用しますし、海外メーカーには「日本人サイズにできないか?」と掛け合うこともします。それでも納得できなければ、ゼロからオリジナル製品をつくることもあります。
万一のときに本当に役立つ、確かな品質のものを届けて行きたいので細かいところまで妥協せずに取り組んでいます。

「万一のときに役に立たなくては意味がありません。品質にもデザインにも妥協はしません」

クオリティを認められて、日本の大手自動車メーカーの純正商品としても採用されている。写真の赤い箱が「日産トレーデイング」に、白い箱が「ホンダアクセス」に提供している商品。
■防災グッズが架け橋となる「新しい可能性」とは?
─さらに、これらの防災グッズは、ギフトやノベルティとしても人気が出てきているそうですね。

ボウサイブロックよりもリーズナブルな「防災安心セット 3,500円(特別価格)」も人気。
住宅会社の場合は、モデルハウスの来場記念の商品で商品券などをお渡しする会社も多いと思いますが、「本当に役立つものをプレゼントできる」と考えると、今だったら防災グッズが受け入れられる時代になりました。車で来場される方がほとんどだと思いますので、「気を付けてお帰りください」と一言添えてお渡しできますよね。
また、「○○記念」などのシールを貼ってプレゼントすればPRにもつながります。捨てられてしまうことは考えにくいですし、邪魔にもなりません。そして、万が一のときがあると「本当に助かりました」と役立ててもらうことができます。
さらに、会社の福利厚生として社員の皆様に特別価格で販売している会社もあると報告を受けております。このトピックには、各企業の防災意識の高まりを感じました。

車のダッシュボードにおいておけば、一時的に車を離れなくてはならない緊急時も所在を伝えることができる。
■自分も、自分以外の「誰か」も助ける、優しい社会へ
─それでは最後に、ファシル様の今後の展望を教えてください。

「自分も、自分以外の『誰か』も助けられる世の中へ」
少し前、出張に行ったときに現地でレンタカーを借りたんです。そのレンタカーの荷台に「ボウサイブロック」がのせられていたのを見たときに、嬉しさのあまりすぐに会社のスタッフに電話をかけてしまいました。私たちの製品が日本全国の車に乗って「誰か」の役に立っていることを実感できた瞬間でした。
今後は、「ボウサイブロックステッカー」を作って、ボウサイブロックを車載している車には貼ってもらうなど、「車に防災」の普及活動をしていきたいですね。
住宅会社さんが、とても真面目に「住まい」について取り組んでいることを存じ上げております。また、さまざまな地域活動をされていることもうかがっております。
ボウサイブロックを車載することで、営業車が100台あれば100か所の防災拠点に、1000台あれば1000か所の防災拠点となり、万一のときの地域貢献につながります。
自分たちの緊急時はもちろん、そして、自分以外の誰かの「困った」の手助けとして役立てていただくことが私の本望です。

「自分も、自分以外の『誰か』も助けられる世の中へ」

~八木社長、お忙しいなかお時間をいただきありがとうございました~
取材日時 2020年9月