住まいのカルテ 〜住まいを診る力・治す力を学ぶ〜

※LIXILメンバーズ通信2025年春号(2025/3)に掲載した記事です。

最終回/暮らしに寄り添う改修プランニング

社会のニーズは「建物を新たにつくる」ことから「既存の建物を生かす」ことへ変わりつつあります。
そこで、「住宅医」の考え方や診断・改修方法を基に、住宅を「診て」「治す」力についてお伝えします。

住まい手の不満を読み解く

改修プランを検討する際に重要なのが、既存の住宅プランの問題点と住まい手の不満を分析し、それを改善するための提案を考えるということです。

例えば、「片付かない」とおっしゃるお客さまがいたとします。既存プランを確認すると、納戸など大きな収納スペースがあり、一見すると収納量は十分に確保されている。それなのに、お客さまからは「片付けが下手なのか、物がすぐ散らかってしまう…」という声が漏れてくる。

こういう時に私は、「お客さまは悪くありません。ほしいところに収納スペースがないのが悪いのです」と伝えます。実際、大きな納戸があるからといって、うまく片付けられるわけではありません。日常的に使うものをわざわざ納戸まで片付けにいくでしょうか。大事なのは、量ではなく、適所に適切な収納があるかどうかなのです。

また、安易に納戸などを設けると、使わないものを押し込めていき「奥に何があるのか分からない」という状態に陥ります。大きな収納スペースは、通り抜けられるようにして全体を見渡せるようにする、または、住まい手の使い方をイメージし、棚を設置するといった工夫が求められます。

収納の工夫という点で、収納に扉ではなくカーテンを利用することもあります。カーテンと聞くと、「安普請な印象になるのでは」と思うかもしれませんが、質感のいいベーシックな無地の布を使うと、内装デザインの一つとして、上品で柔らかい雰囲気を演出できます(写真1)。開け閉めが楽なので、簡単に収納スペース全体を確認でき、高齢者にとっても負担がありません。

収納の奥行にも工夫が必要です。キッチンやリビングなどの収納で、450㎜程の奥行がある収納棚を目にすることがありますが、納戸同様に、奥行が深いと奥に収納したものがなかなか取り出せません。奥行は200~250㎜に留めておいた方が案外使い勝手が良い収納になります。

写真1
写真1

目次