
#年次大会2025 #地域密着型工務店 #Log System #ワークライフバランス
今回は、オンライン年次大会2025の特別企画。相羽建設の相羽健太郎さん、拓匠開発の工藤英之さん、OKUTAの小泉太さんをお迎えして行われたトークセッションをお届けします。ファシリテーターを担当するのは、LIXILの對馬儀昭。テーマは、「1.各社の事業展開」「2.人材の確保」「3.地域貢献/ブランディングに繋がる活動」と、どれも興味深い内容となっています。今回は前編を、次回にわたって後編をお届け予定です!

ファシリテーターは株式会社LIXILの對馬が担当いたします。
トークセッション1各社独自の事業展開
對馬 本日はお忙しい中ありがとうございます。このトークセッションでは、OKUTAの小泉太社長、拓匠開発の工藤英之社長、相羽建設の相羽健太郎社長のお三方にお話をお聞きしていきたいと思います。

左からOKUTAの小泉太さん、拓匠開発の工藤英之さん、相羽建設の相羽健太郎さん
実は地域工務店と
親和性が高い公園事業
對馬 ひとつ目のテーマは、三社さま独自の事業展開について。まずは相羽社長にお尋ねします。御社では地域貢献にも関わる公園事業などの展開、そこからの多角化、いろいろ展開をされていますが、いきなりそういう方向に行かれたわけではなく、段階を経てやられていると思います。そのきっかけになった部分を少し教えていただけますか。

相羽 公園事業については、もともと僕らも建築業で、公園という領域に自分たちが関わることになるとは全然思っていませんでした。「地域貢献」と言っていただきましたけど、別に地域に貢献する気は全然なくって。もちろん貢献に繋がればいいなとは思っていますし、そういう意味では地域事業みたいなことかなと思っています。一方で、社内では「ちゃんとチャリンチャリンいわせろ」って、いつも言うんですよね。そうでないと、やっぱり活動は継続しないと思っているので。貢献とか、NPOなんかもそうですけど、「非営利」みたいな訳し方をすると、人のモチベーションが下がったとき、とたんに終わってしまうみたいなことがあるから。やっぱり、しっかりチャリンチャリンいわせていくというのが、ひとつ必要なことだなと思っています。

相羽建設がこれまで携わってきた主な公園事業。非営利ではなく、ビジネスとしてしっかり事業化することを基本としている
相羽 東村山のある公園にたまたま水車があって、それがもう何十年と動かなくなっている、直せないかというご相談をいただいたのが最初です。それから、公園のなかで伐採樹木が出るという話を行政からご相談いただいて、公園のベンチだとか、遊具をつくったり。そんなことを請け負っていたなかで、たまたまコロナ禍に国からも「地域の公園の有効活用を」というのが地方自治体に向けて出ていて。これは全国で初めてだと聞いていますけれど、東村山市に関しては、指定管理者制度で全169公園、すべてを民間に管理委託することが決まったんです。あとあと聞いたら、行政のある担当者は僕らを公園の事業に巻き込んで、なかに入ってもらいたかったという意図があったそうなんですけど。僕らは全然関係ないものというふうに思っていたんです。結果的には、指定管理としてグループに入りました。
そうすると結局、公園のなかには管理事務所だったり、いくつかの建築の仕事が付随してくるんですよね。僕らは、掃除だとかメンテナンスだとかっていう公園のメンテナンスなんて全然ノウハウがないよと思っていたのですが、建築が意外と関わってくることがわかって。それに自治会の方とか、地元の方との交流がすごく増えるので、俗に言う地縁みたいな繋がりもできてくる。それは僕らにとって、不動産事業などでは大きなお客さまでもありました。これは最初からではなく、結果として出てきたものですが、実は公園事業というのは地域工務店と親和性が高いんだというのが、やりながらわかってきたんです。

現在は東村山市の公園管理委託先企業のひとつになっている相羽建設。公園の在り方や新施設については、地域の方々との意見交換の場も設けてきた
對馬 なるほど、よくわかりました。やはり公園にはみんなが集まってくるという感じで、すごくイメージしやすいです。ビジネスにも繋げなきゃいけないですが、まずはやっぱり人とのつながりということを、相羽社長は大事にされていたんじゃないかなと思います。
相羽 ひとつだけ補足させてもらうと、僕らは「土着してる」って言い方をよくするのですが、事業をやっている場所をなかなか変えられないというのは、飲食をやっている方と圧倒的に違うなと思っていて。その土地の価値を上げないと、自分たちのビジネスは結果的に盛り上がっていきません。そのなかで公園というのは地域の財産のひとつなので、公園の価値が上がること、もっと言えば不動産の価値が上がって地域の価値も上がることは、僕らにとって大きなモチベーションになるんです。
土木ができる強みを
活かした街づくり
對馬 公園でいえば拓匠開発も、市内の千葉公園で「夜ハス(YohaS)」というフェスイベントをされていますよね。今お話しいただいた地域貢献や繋がりといった観点で、工藤社長のお考えもうかがえますか。

工藤 もう相羽社長に全部お話しいただきましたが、私たちも同じ思いです。デベロッパーって、地域の価値を上げなきゃいけないんですよね。まずそこを盛り上げていかないと、デベロッパーじゃない。私たちは土木からスタートしているので、一棟一棟では勝てないところがあります。ただ、土木って街づくりなので。当時は“Buy a house , Get a town”、一個家を買うと街がついてくるよと言っていました。いい街を作りたいなと、ずっと思っていたんです。それで本社から徒歩3分のところに、5棟の分譲用地で仕切った「椿森コムナ」を。そこにツリーハウスをつくって面白いことをしていたら、「拓匠って、なんか地域貢献してるよね」というふうになっていって。

2016年にグッドデザイン賞を受賞した「椿森コムナ」。空地だったところの樹木にツリーハウスをつくり、くつろげるデッキやキッチンカーを置いて、遊休地を地域のコミュニティスペースに活用した取り組みが高く評価された
工藤 当社も本当に相羽社長と一緒で、食べていかなきゃいけないフェーズがあったので。まずはもう“I love me”ですよね。それからちょっとお客さんに対して“I love you”になって、余裕が出てきて今度は“I love you near here”みたいな。それがやっぱり、地域の公園だったんです。行政から、「千葉公園のオオガハスをもっとメジャーにしたいんだ」と。それで「なにか面白いことやってよ」ということでスタートしたのが「夜ハス」です。またそこで経験をして、地域・社会貢献ってこういうことなんだなって、我々もどんどん成長していった。初めから良いことがしたいとかではなかったんです。ちょっとしたきっかけ、ご縁を積み重ねていったらこうなっていた、というのが事実だと思います。

毎年6月、千葉市の花であるオオガハスをテーマに千葉公園で開催されるアートフェス「夜ハス(YohaS)」
對馬 ビジネスありきではない、自然体でのいろいろな形のつながりを大事にされたと。地域の住宅会社さん、不動産会社さんとしての地縁、先ほど土着という話もありましたけれども、まさにそういったところが、ビジネスにも最終的にリターンとして返ってくるものなんだなというディスカッションだったと思います。工藤社長にもうひとつ、ちょっと深堀りすると、私もプライベートで拓匠開発の平屋の分譲地、街というのを見てきました。本当に買いたいと思うような感じで。家を買ったら街もついてくるというのが、すごく良いなと思いました。この「街」をコンセプトにしたという、そのきっかけというか、こだわり、経緯の部分を、みなさんにも分かりやすく教えていただけますか。
工藤 はい。もともと私どもは土木の会社なので、道路をどこに配置して、宅地の大きさを40坪にするのか60坪なのか、100坪なのか、そうやって計画できます。できた宅地を買ってお家を建てるんじゃなく、我々の強みは高低差をコントロールしたり、道路の線形を変えたり、宅地の大きさを変えることができるというのが、まずありました。それであるときオーストラリアのメルボルンのある現場を見たら、平屋がすごくきれいで。なんでこんなのが日本にないのかなと思ったんです。平屋の連棟が。じゃあ、30坪で切っていたものをニコイチにして60坪にしようと。そんな感じで始まっていきました。

土木の会社だからこそできる街づくりが拓匠開発の強み
工藤 やってみたら、道路が6m、高さは3~3.5mで、空の抜けがすごいんです。これこそ街だな、と。4mの道路に3階建てを建てるのも美しいんだけれども、やっぱり建ったときの抜け感が、美しさが全然違って。海外で見たあの街をトライしてやってみて、結果的に良かった。中小企業は差別化を図らないといけないので、そこで徹底して“Buy a house , Get a town”を、土木屋だからこそできる街づくりをしていこうということで、今に至るという感じです。
對馬 なるほど。私も見させてもらいましたけど、すごく住みたい街だなと思いました。家族の光景をとらえた写真も見ましたが、みなさんニコニコしているんですよね。やっぱりこういう街に住めるからこそ、笑顔も絶えないんじゃないかなと。まさに工藤社長の「差別化戦略」ですよね。戦略というと少し固くなっちゃうんですけど、本当に素晴らしい展開だと思いますし、唯一無二だと思います。昨今、平屋も増えてきていますので、そういった抜け感なんかも皆さん参考にされたらすごくいいんじゃないかなと思います。
時代をみて大型ショー
ルームを小型の店舗に
對馬 今、差別化というお話がありましたが、ここをもう少し掘り下げて小泉社長にうかがいます。OKUTAでは、コロナ禍に大型ショールームを辞めて、17店舗ですか、ちょっと小型の店舗にして、いろんなところに「LOHAS studio(ロハススタジオ)」という展開をされたということですが。大を小に、結構これ、地域貢献という観点においても素晴らしいことで。大がなくなるという点では、大きな決断をされたと思うんですよね。すごく大変だったんじゃないかなと。そこで「私はこんなふうに考えたんだよ」といったところを教えていただければと思うのですが。

小泉 きっかけは、うちのオーナーでした。コロナが始まったとき、志村けんさんが亡くなられてしまったり、本当にこのコロナっていうのは一体なんなんだっていうことで、やっぱり社員も「外に出たくない」とか、社員のご家族も「会社に行ってほしくない」といった声が上がりまして。僕は当時、営業部の統括だったので、常に広告や売上げの責任が念頭にあるじゃないですか。でも、そのときにうちのオーナーが、「もう全店閉めろ」と言ったんです。「社員の命より大事なものはないんだから」と。
それで広告を全部止めて、全店閉鎖しました。もう34年目になりますが、創業以来初めてだったと思います。そこに命があって、元気であれば、いつでもなんでもできるからと。でも私は営業部の統括として、ずっと手をこまねいているわけにもいきません。オーナーとも相談しながら、そこでインサイドセールスに大きく舵を切ったんです。

コロナ禍を機にOKUTAで開始されたインサイドセールス型の商談
小泉 私たちは、すでにスーパーフレックス制度にしていたので、社員は全員ノートパソコンを持って自宅でも仕事ができる環境で、テレワークに移行しやすかったんですよ。自宅でオンライン相談のトレーニングを常にZOOMで行いながら、お客さまの目線に合わせて、普通に対面で商談しているのと同じようにしようと。資料も全部オンライン用の資料に切り替えました。広告をもし入れるなら、「オンライン相談のみ承っています」。ほぼ1か月ぐらいトレーニングを積み重ねて、オンライン営業のみで再スタートしたんです。そうしたら意外とオンラインでも1000万、2000万とお申込みいただけて、これは良いビジネスチャンスだなというふうになりました。
これからテレワークを前提としたビジネスモデルをつくっていくのに、大きい事務所なんかいらないでしょうと。ただ、コロナが落ち着いたときに打ち合わせするスペースは、必要に応じてアクセスのいい場所に。僕、都内のマネージャーをやっていた時代があったので、ずっと路線図とにらめっこしながら「こことここが良いな」とやってきました。うちはいま、事務所ってお客さまの商談スペースで、各店フリーデスクも1席か2席しかないんです。あると社員も来ちゃうじゃないですか。なので、うまくそこをフリーデスクにできるように。ハイブリットではあるけれども、もう半分以上みんなテレワークですね。

コロナ禍を機にOKUTAで開始されたインサイドセールス型の商談

OKUTAが首都圏に17店舗展開する「LOHAS studio(ロハススタジオ)」
小泉 育成の部分では、新人のスタッフの若い子たちには来て学んでもらわなければいけないので、そこのOJTも含めて、うまくシフトを組んでやってくれています。店舗数は増えていますが、家賃は断然下がりましたね。結果的に経費削減にもなっています。オンラインがうまくいくと交通費もかからないんです。都内の駐車場代なんかすごく高いので。
ただ、これは営業スタイルとしてひとつ確立できたんですけど、私たち建築業は現場の監督とか、メンテナンスのスタッフとか、まだまだお客さんのところに訪宅しなければいけないということもあって。当時は緊急対策マニュアルということで、手袋二重とか、マスクも二重とかで、女性のスタッフが有志でマスクを作ってくれたりとか。ゴーグルまでしてお客さまのお家に行きましたからね。
でもお陰さまで所作とかそういったところは、スタッフも非常にお客さまに対してトレーニング的に学べて、一つのパーソナルブランディングには繋がっていったのかなと思います。命が一番大事だということをきっかけに、僕がその後の改革で考えていたのが、現場監督をオンラインでできるようにならないかという次のビジネスモデルだったので。
對馬 なるほど。弊社もテレワークスタイルで、私も予約しないと席がないという会社にいますけども。意外とこのオンラインとデジタルを使った環境とのリアルタッチは、目的をしっかりできればコミュニケーションがすごく効率的にできますよね。そういった部分において、OKUTAさんは本当に差別化されているし、ビジネスチェンジをうまく体現されるんじゃないかなと思います。
トークセッション2人材の確保
對馬 次に、人材ということにフォーカスをして皆さんとお話ししていこうと思います。まずは小泉社長。先ほど、「命より大切」というお話がありました。まさにその通りだと思います。そういう小泉社長の考え方が、おそらく社員さんのエンゲージメントの向上にもつながっているんじゃないでしょうか。ワークライフバランスも考えながら取り組みをされていたと思うんですけども、逆にこれをやることによって、メリットだけじゃなくデメリットの部分、ご苦労の部分もあるのではないかと。やはりこの建設業界は、ビジネスチェンジがなかなか難しい業界なので。どういう苦労があってそれをコントロールされたのか、そこも少し掘り下げていただけますか。
テクノロジーを駆使して
新たな働き方を
小泉 そうですね、苦労の面でいうと、若手スタッフの成長を促していくコミュニケーションの部分。やっぱりテレワークを前提とすると会う機会が圧倒的に減るので、若いスタッフが孤独を感じて離職してしまったり、定着率への影響が少なからず出るということが改革のときはありました。でもそこは、「好きこそものの上手なれ」で。OKUTAではいま、サークル活動に力を入れています。それぞれの好きなものを介して、縦軸だけじゃなく、縦横無尽な組織体制で臨めるように。横軸として、他部署でも共通の趣味を持った人たちがサークル活動で集まって、リフレッシュしながらそれを仕事に活かしていこうというのが一つあります。

サークル活動で好きなものを軸に社員やスタッフのコミュニケーションがとれる場を設けながら、ワークライフバランスのとれた多様な働き方を推進
小泉 もちろん、仕事のコミュニケーションに関しては、ただ遊んでいればいいという話じゃないので。そこをどう解決するのかというと、やっぱりテクノロジーしかないと思っています。方針としてワークライフバランスとか、社員の働き方の多様性を尊重するということを掲げていたら、そこに同調した同志が集まって、いろんなアイデアを上げてくれました。今では、困ったときにすぐ聞けるサービスとして「ボイス」というアプリを社員が立ち上げてくれています。事務所に先輩がいなくて聞きづらいけれど、誰に聞いたらいいかわからないようなことの声を拾ってくれるアプリ。バックオフィスのスタッフがいるのですが、それを働くママさんとかがやってくれることで、もうリアルタイムで問題が解決できるんです。安心感につながるので、そういったテクノロジーを駆使するということもすごく重要な要素として考えています。
現場監督がオンラインでできるのかという話も。きっかけは、10年選手のすごく優秀な社員からの「徳之島に家族で引っ越すので退社しなければならない」という相談でした。辞めてほしくないですし、いずれ戻ってくるだろうとも考えて、これはもう絶好のチャンスだと。ずっとやりたかったオンラインの現場監督を徳之島からやってくれないかと言って始まったのが、「TOKUNOSHIMA base」です。それでオンラインの現場監督の仕組みができ、それに続くものも。これは、LIXILさんからも表彰をいただいたものなんですけど。「私も家族でエリア外に引っ越してしまいますけど、こういう働き方だったら続けられます」ということで、今は足柄に「ASHIGARA base」もできました。

遠隔でも現場の状況が確認できるリモート現場可視化アプリ「Log System」など、テクノロジーも駆使しながら多様な働き方を実現
小泉 社員のワークライフバランスを考えたときに必要なのは、「個の自律」と「チームの調和」、この2つだと思うんですよね。自分さえ良ければいいと思ったら、うまくいかない。相互扶助の精神で、やっぱりお互いさまだしお陰さまだしという、そういった精神を大事に、和を尊ぶような組織になってもらえたら。うちは正社員に限らず、パートのスタッフの方も、エージェントでうちと業務委託で働いてくれている準社員のようなスタッフの方々もいますが、そうした働き方の多様性もワークライフバランスにつながると思っています。
對馬 素晴らしいですね。「働く場所は問いません」というOKUTAさんの方針。社員さんに安心を与えて、いろんなところで新しい働き方を尊重し、チームを編成してサークル活動をただの遊びではなくネットワークの形成にも役立てると。すごく良い展開だなと思います。
小泉 サークルには、退社した社員も来ますからね。
對馬 そうなんですか。私も入れてもらえますかね。(笑)
小泉 ぜひ!
非効率的なやり方ほど
合理的なこともある
對馬 ワークライフバランスの話が出ましたが、「個の自律」と「チーム調和」という観点で、今度は工藤社長にお話をうかがいたいと思います。拓匠開発の「ネバーランド構想」プロジェクトの舞台、千葉公園へ私も行ってきました。あの公園、好きですね。あそこにあるスターバックスで、もう一度ゆっくりコーヒーを飲みたいです。いろんな展開をされていてすごいなと実感するのですが、社員さんにお会いしたとき、皆さん笑顔でやられていて。でも、結構パンパンなんじゃないの?とも思うんです。そういった「人手が足りなくなる」という観点で、採用とか教育はどうされているのか、少しディスカッションできればと思います。

千葉公園を中心に計画されている拓匠開発のプロジェクト「ネバーランド構想」
工藤 弊社の組織図にある「兵形象水(兵の形は水に象る)」というのは、孫氏の兵法です。戦い方とか組織というのは、水のように柔軟性を持っていたほうがいいよということで。この組織図はマグネットで貼られているので、動かせるんですね。「俺は土木だから」、「私は建築だから」、「私は販売だから」とかじゃなく、いろんな事業プロジェクトによってチームを動かせるんです。

孫氏の兵法である「兵形象水(兵の形は水に象る)」にならい、水のように柔軟に配置替えができるようになっている拓匠開発の組織図
工藤 PCで立ち上げて動かすと、顔と文字が出て、もうシンプルにアナログです。それをパッと動かして戦い方を変えていけるというフットワークの良さみたいなものは、うちの会社の強さですね。やっぱり、理念とか想いが大好きで。新卒で5年以内の子の半分がもう県外からですが、西から東京を通り越して来ているくらいなので、入った段階でうちのことを好きでいてくれている子が多いんです。そこがまず大事で。腹を割ってうちの会社を見てもらって、こういうふうに行くんだっていうことを、あらかじめ来てくれる社員には理解してもらうんです。

孫氏の兵法である「兵形象水(兵の形は水に象る)」にならい、水のように柔軟に配置替えができるようになっている拓匠開発の組織図

いろいろな取り組みから注目され、採用では県外からの新入社員も半数を占めるように
工藤 それこそ「夜ハス」というイベントは社員総出でやるので。部長だろうが課長だろうが社長だろうが関係なく、ガードマンをやったり、チラシを折ったりする。そういうことも事前に伝えるんです。そこに共鳴してくれないと、うち結構はキツイよみたいな話もして。
あとは小泉さんのところと目的は一緒で、でも手法は違うなと思ったのは、ものすごくうちはアナログで。OKUTAはスーパーフレックスで、在宅でしょう? うちには3つのオフィスがあってめちゃくちゃ非効率なんですけど、社内のミーティングは必ず第三オフィスでやるようにしているんですよ。ミーティングフロアがあって。それは、企業をダメにするのはセクショナリズムだと思っているので。第一オフィス、第二オフィス、こっちが営業でこっちがつくるほう、それでゴチャゴチャ言うのが嫌なので。一回来てつくっている打合せを見れば、「こうやって建物をつくっているんだ」と営業は分かってくれる。逆もしかりで、営業の販売の数字を上げるのも大変だって、つくり手も見てみればっていうね。
だから、非効率ほど我々拓匠開発は合理的だというふうに思っていて。これで時代錯誤と言われても全然恥ずかしくない。朝は10分、みんなで清掃をするんです。そうしてすれ違うときに、「相羽さんおはよう。今日はどう?」「小泉さんはどう?」とかって、これもコミュニケーションだと思っていて。きれいにしたいとか経費削減じゃなくて、この10分間でみんなの顔を見合わせることができる、これが大事。朝礼も、Zoomで福岡支店含め、第一オフィス、第二オフィス、第三オフィスも全部で日直が順番に変わっていく。これってものすごい非効率じゃないですか。でも、日直当番で各個人が何を考えているのかが毎日わかるんですよ。これでチーム力もアップするという。「なんだ、こういうふうに考えてくれてるんだ。じゃあわかった、のったよ」っていう。この“愛”の力!なんですよ。ちょっと小泉さんとは逆だけど、向かう方向は一緒。手法が違うだけで。
對馬 そうですね。考え方は同じですよね。
工藤 だから、うちもどこかで働き方はいろいろ変えていかなきゃいけないなと思うんですけど、今の段階ではフェーズとしてここが合っているのかなと思ってやっています。社員もついてきてくれているので。ちょっと對馬さんの質問とずれちゃったかも知れないですけど。
對馬 いえいえ、全然ずれてないと思います。手段は、チーム力を形成するための一つの道具、やり方なだけで、いろいろあっていいと思うんですよね。私も営業の責任者をやっていますので、個人的には1日5人ぐらいは会いたいよねって部下にも言うんです。そうすると、いろんな情報が入ってくるので。個の力が上がって情報が束ねられると、ものすごい情報量になるんですよね。その中でコミュニケーションも形成されていくし、個々の考え方を尊重する文化も生まれると思うんです。集合でそういう話をするというのは、まさにそういうことで。どうしてもこの業界は営業先行型で、営業が長、裏方はあまり陽の目を見ないということになりがちですが、本来はイーブンのはずなんですよね。それを工藤社長は気づいてやられているんじゃないかなと、私もものすごく共感しました。
小泉 特に今の子は、そういうのを求めていることも多いですよね。いっとき前は逆でしたけど。上司との飲み会なんか行きたくない、飲み会や忘年会のある会社は……とかって、ありましたけど。
工藤 そうですよね。
小泉 今はむしろ、閉鎖されたところから社会へ出ていくときに、それを求めている方も非常に多いので。フェスのお話とかも素晴らしいなぁと思います。
對馬 私も6月の「夜ハス」にはぜひ、お邪魔させてもらいたいと思います!

相羽 健太郎さん
相羽建設株式会社
代表取締役
相羽 健太郎さん
相羽建設株式会社 代表取締役
大学の文系学部を卒業後、大手住宅メーカーを経て、1998年に相羽建設に入社。建築家の故・永田昌民氏や伊礼智氏、家具デザイナーの小泉誠氏との協働をはじめ、建築業界や行政、地域との価値観に基づくつながりの中で「創発」が生まれるプロジェクトを多数進めている。東村山空き家対策協議委員。一般社団法人木造施設協議会 代表理事。一般社団法人わざわ座理事。産学協働人財マッチングプロジェクト「KoumutenJob!」共同発起人。
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小泉 太さん
株式会社OKUTA
代表取締役社長
小泉 太さん
株式会社OKUTA 代表取締役社長
1981年2月23日生まれ。高校卒業と同時に単身渡米、アメリカの4年生大学(Salem University)を2年10ヶ月で卒業。2002年22歳でOKUTAに入社。37歳で取締役常務就任、取締役専務を経て、40歳で代表取締役社長に就任。2021年10月1日、創業オーナーの意思を継ぎ、C.O.O(最高執行責任者) & C.H.O(人事最高責任者)&C.S.O(最高営業責任者)として、業界の常識を打ち破るべく、新たな挑戦をし続けている。
OKUTAのスペシャルインタビュー記事はこちら

工藤 英之さん
株式会社拓匠開発
代表取締役
工藤 英之さん
株式会社拓匠開発 代表取締役
1999年4月県内建設会社に入社。2002年7月に退社後、2002年9月、拓匠開発に入社。2009年6月に代表取締役に就任。千葉県に本社を構える拓匠開発は、もともと土木からスタートした会社。建築業を主軸にする今でも、そのアプローチは他社と一線を画する。平屋の建売住宅は、連棟によって街並みをつくり、住まいの価値をさらに高めることにも成功。また千葉市とは、フェスの開催で地域の活性化にも取り組んでいる。
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