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《調査》北陸企業、BCP「機能した」のは半数以下と回答

2024年2月25日

1月1日に発生した能登半島地震で、北陸4県に事業所を置く企業の5割以上が「BCPの実効性を十分感じていない」ことが、危機管理とBCPの専門メディア「リスク対策.com」(新建新聞社)のアンケート調査で明らかになった。企業別にみると、1001人以上の会社では7割近くが「BCPが機能している」と感じているのに対し、1000人以下の企業では、「BCPが機能していると感じている」のは3割弱にとどまり、企業の規模によって大きな差があることが分かった(下グラフ)。

調査期間は1月1日~2月2日で、有効回答数は250。北陸4県もしくは能登半島地震において震度5弱以上の揺れを観測した地域に本社や支店、営業所を有し、危機管理担当に責任を持つ立場にある経営者などの回答を有効回答として採用した。回答企業の属性は、50%が50人以下の企業。業種は製造業が最も多かった。

BCPの運用状況を聞いたところ、100人以下の企業は77.6%が未策定であるのに対し、1001人以上の企業では未策定が10.2%と1割程度であることから、中小企業はBCPの策定がもともとされておらず、「BCPが機能していない」と感じていることがうかがえた(グラフ1)。さらに、BCPを定期的に見直している企業ほど「機能していると感じている」ことも明らかになった(グラフ2)。

グラフ1: 企業規模ごとのBCP運用状況

グラフ2:BCP運用レベルと機能の関係

安否確認、中小企業ほど実施率低く

従業員の安否確認の実施状況について聞いたところ、約2割の企業が安否確認を実施していなかったことが分かった。安否確認の方法としては、「全従業員を対象に実施した」との回答が5割近くを占めた。

企業別に見ると、1001人以上の企業では95.3%で安否確認が行われているものの、100人以下の企業では68.1%にとどまった。

BCPの運用レベル別にみると、「BCPは策定していないし、策定する予定もない」としている企業の安否確認の実施が5割強にどどまるのに対して、そのほかの運用レベルの企業は8~9割で安否確認を実施していることがわかり、「平時からの防災意識」と「従業員の安否確認の実施」は相関している結果が出た。

BCP運用レベルごとの安否確認の実施状況

地震災害において、安否確認を行う基準となる震度を聞いたところ、「震度5強」が34 %で最多。次いで、「決めていない」との回答が25.2%だった。

全従業員の安否を確認するまでに要した時間については、24時間以内が55.3%と半数を上回った。「1日以上3日未満」は25%、「3日以上1週間未満」は15.4%だった。企業規模が小さいほど、24時間以内に従業員の安否の確認ができた割合は多いものの、BCPへの取り組み状況や、BCPの実効性には統計的に優位な差は見られなかった。

元日発生で安否確認に苦慮

安否確認における課題を5段階評価で聞き、平均点を算出したところ、地震が元日に発生したこともあり「帰省や旅行者の安否確認に苦慮した」が2.6ポイントで最多、次いで「回答が遅かった」(2.39)、「余震を含め、最終的な安否確認に苦慮した」(2.16)と続いた。

地震後の対策本部の設置状況について聞いたところ、「対策本部は設置しなかった」が43.2%で最多。次に「そもそも対策本部は規定されていない」(33.6%)との回答が続いた。企業規模別に見ると、「全社での対策本部を設置した」割合は、企業規模が大きくなるに従い高くなった。逆に「そもそも対策本部が規定されていない」割合は、企業規模が大きくなるほど低くなった。

災害対応を通じて課題に感じた点について5段階で評価をしてもらい、平均点を算出したところ、「休日の災害対応ルールが徹底されていなかった」が2.55で最も高く、次いで「社員の防災意識が低かった」(2.47)、「休日の災害対応ルールが決まっていなかった」(2.46)、「物流が遅延・中断した」(2.43)が僅差で続いた。

課題と感じた点と、BCPがどの程度機能したかのレベルをクロス分析したところ、「対策本部の設置の遅れ」や「対応方針の決定の遅れ」「災害対応やBCP対応マニュアルの見直し」「関係機関との情報共有」「被害想定の甘さ」「関係部門との情報共有の遅れ」など多くの項目で顕著な差が見られた。「これらの対応、対策の差が、BCPが機能したかどうかの認識にも影響していると考えられる」と同調査は分析している。

夜間や休日のBCP対策に課題

平時から防災やBCPに取り組んでいることについて、5段階評価で回答してもらい平均点を算出したところ、「備蓄の定期的な見直し」が3.34と最も高く、次いで「経営層も訓練・演習には参加する」(3.29)、「安否確認訓練を定期的に実施している」(3.24)が僅差で続いた。

防災やBCPへの平時の取り組み内容と、BCPがどの程度機能したかのレベルをクロス分析したところ、「夜間・休日における安否確認ルールが決まっている」または、「夜間・休日における災害対策本部の設置手順が決まっている」企業ほど「BCPが機能した」と回答しており、夜間や休日におけるBCP対策の重要性を裏付ける結果が出た。さらに「社員向けの防災教育を定期的に実施している」「備蓄品を定期的に見直している」「災害対策本部の設置訓練を実施したことがある」としている企業も「BCPが機能した」と感じている。

自由回答としては、「長期休暇中に災害が発生した場合の安否確認、災害対応体制の見直しが必要」「大型連休で従業員が帰省している場合の安否確認の方法が決まっていなかった」などがあった。