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1-7月の「人手不足」関連倒産は83件 建設業は17件

2023年8月22日

東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、1-7月の「人手不足」関連倒産の状況調査の結果を発表した。

1-7月累計は83件(前年同期比159.3%増)で、前年同期の2.5倍と大幅に増加。2022年の年間件数(62件)をすでに上回っており、年間最多の2019年(156件)を更新する可能性がでてきた。要因別では「求人難」が35件(前年同期20件)で最も多く、2年連続前年同期を上回った。続く「人件費高騰」は29件(同ゼロ)と急増し、2013年の調査開始以降最多を更新した。「従業員退職」は19件(同12件)で、4年ぶりに前年同期を上回った。

「人手不足」関連倒産(1-7月)

産業別では、2024年問題を抱える運輸業が24件(前年同期比500.0%増)と6倍に急増。建設業は17件(同142.8%増)で、2年連続前年同期を上回った。なお、不動産業は2年連続0件だった。業種別では、土木工事4件、木造建築工事業、とび工事業、内装工事業などが各2件で前年同期を上回った。

「人手不足」関連倒産 産業別(1-7月)

コロナ禍による急激な市場縮小で人員過剰感が強まったが、経済活動が動き出すと一転して企業の人手不足が深刻さを増している。慢性的な人手不足産業である運輸業、建設業などの労働集約型産業では、経済活動の復活と同時に人手不足が表面化し、一気に倒産に至るケースが際立つ。人材確保と従業員の定着には賃上げが必須となるが、業績回復が遅れて資金余力が乏しい中小・零細企業では人件費上昇の影響が大きく、賃上げができず人材流出が進むなど悪循環に陥っている。同社は、コロナ禍を耐えてきた中小企業を物価高の外圧と「人手不足」の内圧が襲っていると指摘している。

同調査は、2023年(1-7月)の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出・分析した。(後継者難は対象外)