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資材値上がり分の価格転嫁 「自社で負担」も依然4割

2023年7月5日

全国建設労働組合総連合(全建総連、東京都新宿区)がこのほど公表した「住宅の建材・設備の価格高騰・納期遅延の影響に関する工務店アンケート」結果によると、建材などの値上がり分について、約6割は顧客への転嫁が進んだと答えたが、4割程度は依然として「一部」または「すべて」自社で負担していると答えた。1年前の調査(2022年4月公表)では、「一部を自社」が4.5割程度、「すべてを自社」が1.5割程度だった。

値上がり分の価格転嫁の状況

値上がり分の価格転嫁の状況

住宅の建材・設備の価格高騰の影響については1年前との比較で、工事原価が「かなり上がった」(41.1%)、「上がった」(51.2%)となり、合わせて9割超が値上がりを実感している。さらに顧客への見積価格への影響については、47.2%が「大きな影響が出ている」、48.4%が「少し影響が出ている」と答えた。このうち「20%以上」の上昇は、「リフォーム」で19.0%、「新築」で23.3%となっている。

(1)工事原価の状況 (2)お客様に提示する見積価格への影響
(3)①リフォーム─工事費に対しての値上がり率 (3)②新築─工事費に対しての値上がり率

値上がり分を誰が負担するかについては、「顧客」が57.0%、「一部を自社」が38.0%、「すべて自社」が5.0%で、前年と比べて顧客への価格転嫁が若干進んだことが分かる。また、価格転嫁ができずに自社で負担した理由については、8割近くが「既に見積書を提出していた」と答えており、物価上昇のスピードに価格転嫁が追いついていない様子がうかがえる。「同業他社との競争があるため」も47.1%を占めている。

個別意見では、「このままでは中小零細企業の倒産が増える。中小建設業への減税や補助金をお願いしたい」といった切実な声が聞かれた。

“内窓のみ遅延”で申請できない例も

納期の遅れに関する調査では、納品まで1カ月以上かかる建材や設備機器があるかについて質問。26.7%は「遅れているものはない」と答えたが、「内窓・断熱窓(リフォーム用)」(15.4%)、「給湯器」(11.8%)で遅れがあるとの回答があった。「先進的窓リノベ事業」「給湯省エネ事業」の好調によるものと考えられる。

個別意見では、「支援事業で内窓だけ仕入れが遅れる。工事が終わってからの申請になるので、他の補助対象工事が終わっても申請できない」「予約申請をしても予算がある間に申請できない可能性がある」「補助の拡充や延長をしてほしい」などがあった。

他に制度や政策への要望では、「補助事業の拡充・延長」(26.9%)、「国産木材の安定供給・支援拡充」(23.1%)、「税負担の軽減」(19.3%)が上位に。個別意見では、「2025年の法施行に伴う増改築の減少が気掛かり」「省エネ法、石綿則、インボイスなどルールが変わり過ぎて付いていくのが大変」「石綿調査費用に対して補助が欲しい」などの意見があった。

同調査は2023年4月17日から5月31日にかけて実施したもので、33都道県・877社が回答した。全建総連ではこれらの結果を組合員の意見としてまとめ、関係省庁や政党に要請する考え。