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工務店、価格転嫁できず「値上がり自社負担」苦戦続く

2022年5月19日

ウッドショックによる木材価格の高止まりや建材の値上げ、給湯器・温水洗浄便座等の納期遅延など、住宅づくりに関連する環境の悪化の状況を把握しようと、全国建設労働組合総連合(全建総連)はこのほど、工務店アンケート調査を実施。4月25日に結果を公表した。工事原価が「かなりあがった」と回答した工務店が53.3%を占めた一方、値上がり分を「お客様に負担してもらった」との回答は40.3%にとどまり、多くの工務店が値上がり分を自社で負担している現状が浮き彫りになった。

調査は全国の元請工務店を対象に、3月11日から4月15日に実施。1097社から回答を得た。給湯設備の納期に関して聞いたところ、3月に納品されたものは、発注から納品まで平均66.7日かかっており、最大240日という回答もあった。設備の納期遅延によるキャンセルは、リフォームで7.6%、「工事を待ってもらっている」はリフォームで52.1%あり、受注工事への影響が出ている。

Q.3月に納品された給湯設備はいつ発注したものか

Q.3月に納品された給湯設備はいつ発注したものか

工事原価は「かなりあがった」53.3%、「上がった」42.7%となり、木材関係では構造材、合板、羽柄材・造作材とも、「50%以上値上がり」が3割上を占めた。

見積価格・工事費について、「大きな影響が出ている」は58.8%、「少し影響が出ている」38.8%で、20%以上の上昇は、リフォーム工事で33.1%、新築で44.2%に上った。

工事原価の状況(左)提示する見積価格への影響(右)

工事原価の状況(左)提示する見積価格への影響(右)

値上がり分を「お客様に負担してもらった」は40.3%。一方で、「一部自社負担(負担割合5割未満)」が36.5%、「すべて自社負担」が14.5%、「一部自社負担(負担割合5割以上)」8.7%あり、過半数が自社負担していた。

価格転嫁の状況と価格転嫁できなかった理由

価格転嫁の状況と価格転嫁できなかった理由

売上高が「下がった」は45.1%、利益率が「下がった」は64.9%、受注は「悪化」が49.8%となるなど、厳しい経営状況が伺えた。

受注悪化の理由としては「客が建材高騰の様子を見ている」53.2%、「建材・設備の納期が不確かで受注を断っている」44.4%、「工事金額が高く契約が成立しない」43.4%となっている。

資金繰りに関しては、年末まで現状が続くと心配との回答が41.3%で、既にコロナ特別融資等の融資を受けている回答者(公庫 13.5%・民間 13.3%)も多く、資金繰りへの負担が高まっている。

「廃業も視野」との声も

制度・政策要望では、「事業者の税負担の軽減」が62.1%、「値上がり分に対する国の補助金(消費者向け)」49.5%などを求める声が多かった。

回答した工務店からは「商品の遅延が続く中での補助金(こどもみらい住宅支援事業など)は制度を延長してほしい」「建築主への金利減、補助金支援、住宅ローン減税などお得感につながるような家を建てるメリットを増やしてほしい」「トリガー条項の発動、国産木材の安定供給が必要」「事業の税負担の軽減を早期に行ってほしい」「コロナの影響で大口のリフォームが先延ばし、中止になっている。新築は基本、断っている」「木材の高騰、設備の納期遅れが大きく影響しており、支払いが先行するこの業界では資金繰りが難しい」といった要望や声が寄せられた。

また、給湯器の納品も地場の小さな工務店は後回しにされているとの訴えや、「廃業も視野に入れている」といった声もあった。

今回の調査結果を踏まえ、全建総連は、各国政政党に対して、▽現行補助事業の延長及び拡充等の検討、▽建設資材の価格や設備機器の納期遅延の実態把握、▽不当な価格引き上げ・仮需等が生じないよう適切な対応、▽事業復活支援金や無担保・無利息の特別貸付延長・拡充等の措置──などを要請するとしている。