新築部門
グランプリ

受賞作

「土間リビングと
薪ストーブのある家」

意匠も性能も外構も。
総合力が導いたグランプリ。
土間リビングと薪ストーブがつくる、
伸びやかな住まい

三度目でつかんだグランプリ

塚本 このたびはLIXILメンバーズコンテスト新築部門でのグランプリ受賞、おめでとうございます。

阿部 ありがとうございます。2018年の新築部門、2022年のリフォーム部門では、グランプリにはあと一歩届きませんでした。
" 三度目の正直" ではありませんが、ようやく受賞できました。近年はLIXILメンバーズコンテストのレベルが非常に上がっており、そのなかで受賞できたことは大きな価値があると思います。
2018年と2022年は私が担当した建物でしたが、今回は社員が設計しプレゼンも行いました。私でなく社員が成長し勝ち取った栄冠だったことをとてもうれしく感じています。

三宅 グランプリを受賞できたのは、お客さまとの出会いも大きかったと思っています。私なりの考えですが、グランプリに選ばれるためには、意匠、性能、そして外構などの中間領域の三つが高いレベルでそろっていることが必要です。今回の建物は、その三つのバランスが取れており、しかも、それぞれをきちんと考え抜けたことが評価されたと思っています。

左: 三宅壮汰さん 右: 阿部将也さん

塚本 グランプリが決まった瞬間、会場のテーブル席の盛り上がりがすごかったですね。

阿部 社長は泣いていましたし、三宅はほっとした顔をしていましたね。

三宅 実はプレゼン前よりも、結果発表の直前のほうがずっと緊張していました。今回のような物件はそう何度も巡り合えるものではない、ここで取れなければ次のチャンスはなかなか来ないかもしれない、という思いがあったので、選ばれたときは、うれしさ以上に安心しました。

意匠と性能を磨いた、最適解

塚本 受賞作は、開放的な空間が特徴的ですね。リビングから見える雑木の庭も非常に印象的でした。

三宅 今回は、お施主さまご自身が見つけてこられた造園業者にお願いしました。雑木の庭をつくりたいというご要望がかなり強く、その分野に強い方に依頼しています。

塚本 作品タイトルにある「土間リビング」と「薪ストーブ」は、どのような経緯で採用されたのでしょうか。

三宅 薪ストーブを入れたいというのは、最初からお施主さまのご要望でした。キャンプで使ったときの暖かさが強く印象に残っていたそうで、入れないという選択肢はありませんでした。課題になったのは、その置き場所です。
土間リビングは、建物の内と外とのつながりから導き出したものです。今回はリビングのフローリングの先にウッドデッキを設け、木の連続性で内と外をつなげています。一方で、土間スペースはその流れから少し距離を置き、独立した居場所として計画しました。フローリングから一段下げ、木の床の空間とは異なるもう一つの居場所とし、そこに薪ストーブを置きました。

塚本 性能面では、プレゼンの際に断熱性能と電気代の比較シートを紹介されていました。普段から、ほかのお客さまにもあのようなシートを作成して説明されているのでしょうか。

三宅 すべてのお客さまではありませんが、断熱材やサッシを変えた場合の性能値や金額の比較は必ず行っています。

断熱材の構成を変更し、性能値と金額を比較(協力:JIN 建築工房一級建築士事務所 小森仁さん)

塚本 プレゼン後の公開審査では、伊香賀俊治先生からご家族の健康についても質問がありました。住んだ後の健康面まで地域の工務店として見続けてほしい、というお話でしたね。

阿部 温熱環境や素材を含めて、健康によい住まいであることは、今回の受賞作に限らず当社の大前提です。 ただ、当たり前のこととして取り組んできたので、これまではあまり意識してきませんでした。伊香賀先生のお話を聞いて、その価値をお客さまに伝えていきたいと思いました。

要望を受け止め、
住まい全体へつなぐ

塚本 プレゼンでは、お施主さまの意見を尊重しながらも、最終的には設計の観点からベストと考えるものを信頼して選んでいただいた、というお話がありました。

三宅 いまのお客さまは、SNSなどの情報をもとに具体的に要望を伝えてくださることが多いです。ただ、それをそのまま採用するのではなく、あくまで全体として見たときにどうか、という観点で提案するようにしています。
やはり、家全体を一番俯瞰して見ているのは設計者です。今回は、そのことをお施主さまも理解してくださっていました。細かなご要望を伺いながらも、それが全体に合うのであれば取り入れるし、そのままでは合わない場合は、この家に合う形に少し作り変えて提案する。そうしたやり取りを重ねながら進めていきました。

この部分ではなく全体で判断する視野は、当社の特徴の一つである「ワンストップ」体制で鍛えられたと思っています。営業段階で大まかなプランを描き、設計で細部を詰め、施工が進んでからも現場で完成に近づく姿を確認する。そうした流れを一通り経験できていることが、全体を俯瞰して考える力につながっていると感じています。
また、全体を俯瞰する経験をすることで、次に営業段階で描くプランでも、もっと先のことまで考えられるようになります。たとえば造作まである程度イメージしながらプランを描けるので、最初に提案するプランの精度も少しずつ上がっていくのだと思います。
加えて、社内でも完成した物件を検討し、見た目や納まりだけでなく、配置の考え方まで含めて議論します。そうした環境のなかで、最後まで詰めて考える姿勢を学びました。

設計を大事にする風土

塚本 今回の受賞作を支えた阿部建設さんの家づくりについて伺います。普段どのようなお仕事をされているのでしょうか。

阿部 仕事の半分は注文住宅で、3割ほどが施設建築、残り2割ほどがメンテナンスやリフォーム、リノベーションです。注文住宅は年間24棟限定で、いまはフルオーダー住宅に特化したブランディングを進めています。モデルハウスや予約制の完成見学会も活用しながら、テイストや手法の幅を見せられるようにしています。

塚本 阿部建設さんは、LIXIL メンバーズコンテストの審査員長である伊礼さんと協創されています。会社として、もともと設計を大事にする土壌や風土があるのでしょうか。

阿部 「設計はできるだけ自社でやろう」という風土は、かなり前からある会社だと思います。長年、N設計室の永田昌民さんと頻繁にご一緒させていただいていましたし、伊礼智さんや中村好文さん、近年では泉幸甫さんや連合設計社市谷建築事務所など、さまざまな方々と組んできました。
現在はフルオーダーを推進していることもあり、社内では一人ひとりが自分なりの納まりや設計に挑戦していますが、こうした建築家の方々との取り組みがレベルの高い注文住宅を実現する一助となっていることは間違いないと思います。

塚本 伊礼先生は総評で、総合力のある工務店だとおっしゃっていました。

阿部 懇親会でも、「その総合力はどのように鍛えているのか」という質問をいただきました。ただ、当社が総合力の高い工務店だと胸を張って言えるかというと、私にはまだそこまでの自負はありません。まだまだ高めていかなければならないところばかりですし、課題もたくさんあると思っていますが、ワンストップで業務をこなす社員の成長が総合力向上につながっている理由のひとつかもしれません。

ワンストップの現場が、
設計者を育てる

塚本 三宅さんが阿部建設さんを就職先に選んだ理由は何だったのでしょうか。

三宅 もともと住宅に興味があり、分業ではなく、できるだけ全部に関わりたいと思っていました。そうした会社を探していたなかで、阿部建設がワンストップ体制をとっていることを知り、「かっこいい家を建てている」と感じたこともあって、入社したいと思いました。

塚本 新卒入社では、ワンストップは大変だったのではないでしょうか。

三宅 最初はすべてをゼロから覚えなければいけないので大変でした。ただ、とにかくやってみる機会を与えてくれ、必要なところは周りが支えてくれる。そういう環境のなかで、少しずつ仕事ができるようになっていきました。

阿部 ワンストップでは営業・設計・工事まで全部一人でやるので、マニュアルが作れません。ですから、必然的にやりながら覚えてもらう方針になります。三宅も、かなり早い段階で自分一人で仕事を取ってきていました。

三宅 1年目の終わり頃でした。21歳のときです。

塚本 すごいですね!今回の受賞作を見ても、その完成度の高さには驚かされます。

三宅 先輩にプランを見せると、考え方や施工、使いやすさまで含めて多くの指摘を受けます。そうやって社内のさまざまな人の考えを聞くなかで、今の自分の考え方が形づくられてきました。「もっとここまで詰めて考えなければいけない」と感じる繰り返しのなかで鍛えられてきたのだと思います。

塚本 成長できる環境なんですね。

三宅 お施主さまに出すものは、きちんと考え抜いたものでなければいけない。その意識は強く鍛えられました。今では私自身も、後輩のプランに対して同じ目線で考えるようになっています。

阿部 お施主さまから見れば、1年目か10年目かは関係ありません。阿部建設の担当者である以上、最初からプロとして見られます。その意識を持つことが大事だと伝えています。

コンテストが残したもの

塚本 今回グランプリを受賞されたことで、今後のご自身の設計にどのような影響があるとお考えでしょうか。

三宅 もともとコンテストを意識して設計していたわけではないので、その意味で大きく変わることはありません。最後の3 作品に残ることだけがすべてではなく、地域で選ばれたり、一部分が評価されたりすることにも意味があると感じています。
ただ、今回グランプリを取れたことは一つの評価の基準になったと思います。グランプリを取った会社として、提案のなかにきちんと評価されるポイントを持たせられるように、これまで以上に気を抜かずに取り組んでいきたいと思っています。

塚本 社内では、何か変化はあったのでしょうか。

三宅 社内のみんなからは「受賞おめでとう」「プレゼンよかったよ」という声をもらいましたが、全体としてはことさらに構えるような雰囲気はありませんでした。それぞれが自分の仕事にプライドを持っていて、要素がそろえば、自分たちにも十分目指せると感じている人が多いのではないかと思います。

塚本 これから挑戦してみようと思う方に向けて、最後に何かアドバイスがあればお願いします。

三宅 コンテスト応募は、書類の準備などを通じて自分たちの仕事をあらためて見つめ直す機会でもあります。そのうえで、自分がつくったものに対して第三者のわかりやすい評価が返ってくることには大きな意味があります。
お施主さまに説明するときも、ビジュアルだけではなく、どう考えてこういう形になったのかを言葉で伝えることは必ず必要になります。応募は、自分の物件をあらためて振り返り、言語化する機会にもなります。

阿部 どうしても社内だけで仕事をしていると、外が見えにくくなる面もあります。コンテストの良さは、自社の立ち位置が客観的に見えてくることです。自分たちの手応えと外部からの評価は、必ずしも同じ方向になるとは限りません。応募を迷っている方は、まず一度出してみてほしいですね。

建築事業部 設計

阿部建設株式会社 
三宅壮汰

経歴
2001年 愛知県豊田市生まれ。幼少期より大工に憧れるも、設計から深く家づくりに携わりたいと考え建築の道へ。豊田工業高等専門学校 建築学科を卒業後、「営業・設計・施工」を一貫して担えるワンストップ体制に魅力を感じ、2022年に阿部建設へ新卒入社。