新築部門 グランプリ

受賞作

「 ミサトノイエ 」

LIXILメンバーズコンテストへの挑戦が
つくり手としての自分を育ててくれた

「評価される」という実感が、
挑戦を続ける原動力に

塚本 新築部門でのグランプリ受賞、おめでとうございます。ほしかわ工務店は、2023年度にリフォーム部門で準グランプリを受賞され、今回は新築部門でのグラン プリ。頂点にたどり着きましたね。

干川 当日は本当に信じられない気持ちで、宙に舞ったような感じでした。LIXILメンバーズコンテストには2013 年からチャレンジし、敢闘賞は何度もいただきましたが、なかなかグランプリに届かなくて。2023年度も準グランプリで悔しい思いをしていたので、本当に嬉しく思っています。

塚本 受賞コメントで、「第三者からの評価が嬉しかった」とお話しになっていました。自分たちの仕事が、業界や社会の中でどう位置づけられているのかを知る機会として、コンテストは貴重だと感じます。

干川 おっしゃるとおりです。2013年に初めて応募したときは、自分の仕事に自信を持ちきれない時期でした。でも、敢闘賞という賞をいただいて、少しでも認められたことがすごく嬉しくて。「もっと上を目指したい」と、挑戦し続ける原動力になりました。

おにぎりが似合う、
ほっとできる家を目指して

塚本 今回の受賞作品「ミサトノイエ」について、改めてコンセプトや特徴を教えていただけますか?

干川 「ミサトノイエ」は、群馬県高崎市の高台に建つ住宅です。見晴らしの良い立地を活かし、外の景色を暮らしの中に取り込む、開放的な室内空間を目指しました。施主様からは「おにぎりが似合う、素朴でほっとできる 家にしたい」というリクエストがあり、プライバシーを確保しつつ明るく過ごせるよう、隣家や道路からの視線を遮りつつ、風や光を取り込めるよう、木塀を工夫して 配置しています。

また、家づくりの過程に施主様自身にも参加していただいたのも特徴です。塗装や芝張りなどを一緒に行い、段取りから片付けまで経験していただきました。こうした体験が、住まいへの愛着につながったのではないかと感じています。

塚本 大きな屋根の上に、小さな屋根が交差するようなデザインが印象的です。干川さんの物件ではよく見 かけるスタイルですよね。

干川 あの形状は、もともと平屋を希望される施主様と一緒に考える中で生まれることが多いですね。平屋に憧れはあっても、コストや敷地の都合で難しい場合もあります。そこで、シンプルな二階建てにアレンジしつつ、平屋の持つ"おおらかさ"や"安心感"を残すように工夫しています。

家具から考える家づくり。
暮らしを使いこなす設計

塚本 ほかにも、ミサトノイエで特に工夫された点があれば教えてください。

干川 「収納や動線には特に工夫を凝らしています。外物置や土間収納、壁面収納を効果的に配置して、人とモノ、それぞれの居場所をしっかりと設けました。また、裏動線や丸テーブル付きの稼働式キャビネットを採用し、回遊性のある暮らしを実現しています。玄関脇の窓にはベンチを設けて、心地よく過ごせる居場所もつくりました。

塚本 干川さんの家は、家そのものが家具でできているような印象を受けます。窓ベンチは、プロダクトデザイナー/建築家である小泉誠さんのデザインがベースになっているのでしょうか?

干川 「収納や動線には特に工夫を凝らしています。外物置や土間収納、壁面収納を効果的に配置して、人とモノ、それぞれの居場所をしっかりと設けました。また、裏動線や丸テーブル付きの稼働式キャビネットを採用し、回遊性のある暮らしを実現しています。玄関脇の窓にはベンチを設けて、心地よく過ごせる居場所もつくりました。

塚本 干川さんの家は、家そのものが家具でできているような印象を受けます。窓ベンチは、プロダクトデザイナー/建築家である小泉誠さんのデザインがベースになっているのでしょうか?

干川 はい、小泉さんからはとても大きな影響を受けています。私は「暮らすことは、住まいを使いこなすこと」と考えています。家事がスムーズにできるだけでなく、趣味やライフワークにも寄り添える空間であることを重 視して、家具を建物に取り込んでいます。

その考えから小泉さんから多くを学び、大工工務店として細部にまでこだわり抜いた、家具と一体になった住まいづくりを心がけています。これが、ほしかわ工務店の強みだと自負しています。

「外とつながる」。
LWは自分にとっての"勝負窓"

塚本 審査講評の中で、外構の専門家である古橋宜昌先生が「外とのつながり方が非常に上手い」と評価されていました。その点は普段から意識されているのですか?

干川 そこはいつも大切にしている部分です。「ミサトノイエ」では、LDKに二つの大きな開口部を設けました。一つは植栽を身近に感じるためのもの、もう一つは遠くの景色を眺めるための窓です。後者の窓前に は、あえて植栽を置かず、抜け感を大切にしています。敷地と眺望、両方の魅力を最大限に引き出す工夫です。こうしたデザインの考え方は、同じく審査員である伊礼智先生の「開口部の近くに植栽を配置して、外とのつながりを柔らかく演出する」という設計手法から学んだものです。

塚本 その開口部に使用しているのがLIXILのLW。干川さんのこれまでの設計事例を拝見すると、LWのような大開口を設計の武器として積極的に活用している印象です。

干川 そうですね。LWは自分にとってまさに"勝負窓"と言える存在です。閉めても開けても心地よく、空間に対するインパクトが非常に大きい。今もLWを採用した住宅を設計・施工しています。

ただし、コスト的にはやはり割高です。だからこそ「ここには絶対にこれを使いたい」と思う場所に絞って提案しますし、その際は自分の熱意をストレートに施主様に伝えるようにしています。負担をお願いする提案だからこそ、「なぜこの窓が必要なのか」を、言葉でも熱量でもしっかりと届けることが大切だと思っています。

塚本 開口部が与える外部とのつながりや、内部空間への影響は、確かにデザインにとって重要な要素。LWは力強い味方ですね。

手仕事の中に溶け込むLIXIL製品。
"つくり手"目線で選ぶ理由

塚本 LW以外でも、LIXIL製品はよく使われているのでしょうか?

干川 はい、たとえば内蔵ブラインド入りのガラスは、浴室から景色を楽しみたい場面などでよく採用しています。「ミサトノイエ」では、浴槽とトイレがLIXIL製品です。

クライアントから明確な要望がなければ、通常、私たちを長年バックアップしてくれているLIXIL販売パートナー「マドリエ」、当社ならばダイクマトーヨー住器経由で設備を選んでいます。会長の大熊文雄さんには、創業当初からずっと応援していただいていて、3月8日の授賞式にも来てくださいました。自分が大賞を受賞した瞬間はすごく喜んでくれました。

塚本 干川さんの設計の雰囲気と、LIXIL製品のスッキリした意匠は相性が良いと感じます。

干川 そう言っていただけるとありがたいですね。大工工務店としてのポリシーとして、既製品をそのまま使うことは少なく、造作やオリジナル性を大事にしています。建具も、既製品ではなく建具職人に一からつくってもら うことが多いですし、キッチンも家具の一部と考えて、きるだけ造作で仕上げるスタイルを採っています。ただし、もちろん全部を造作とはいきません。施主様の世代や価値観によって、既製品と造作を組み合わせたり、既製品をそのまま使ったりすることもあります。造作と既製品をどうバランスよく組み合わせるかが設計の肝だと思っており、その点でLIXIL製品はとても使いやすいと感じています。

塚本 LIXIL製品がその柔軟な家づくりに自然と馴染むというのは、コンテストの理念にも通じる気がします。100%LIXIL 製ではなくて、"良い家"の中でLIXIL製品を上手く活かす。そこも評価されるポイントなのかもしれませんね。

原点は「好きな建築」への気づき。
立ち読みから始まった設計への道

塚本 先ほど「大工工務店」としてのお話がありました。もともと大工からスタートされた干川さんが、設計や意匠に目覚めたきっかけは何だったのでしょうか?

干川 20代で大工として現場に入りました。最初はハウスメーカーの下請けで、一人親方で手間請けの仕事をしていました。ただ、そうした仕事の進め方に疑問を覚え、いったん離れることにしました。
ただそのとき、30代前半になっていて、誰かに教わることも難しい年齢でした。だから「そもそも自分は建築の何が好きなんだろう」と自問自答を繰り返し、近所の本屋で4~5時間くらい立ち読みしながら、いろんな建築の本を手に取ることもありました。
そのとき出会ったのが、伊礼さんの本です。読みながら、「これが自分の好きな建築かもしれない」と思いました。その後、塚本さんが企画されたツアーで、伊礼さんの「白馬の山荘」を訪れる機会があり、思いが確信に変わりました。それでツアーで知り合った参加者との縁を頼って、伊礼さんが主宰する「住宅デザイン学校」に通うことに決めました。

塚本 住宅デザイン学校では、何が一番学びになったのでしょうか?

干川 「やはり「即日設計」ですね。3~4時間でプランをまとめ、審査員の前で発表するという形式の授業で、短時間で建築的な思考を組み立てる訓練を繰り返しまし た。この経験は、今の設計スタイルの土台になっています。
ただ学校で学んだ内容はもちろん大きな財産ですが、それと同じくらい、同じ志を持った仲間たちと出会い、彼らの設計をたくさん見られたことが大きかったですね。
自分に何が足りないのかを身体で感じて、地元に戻ってはその反省をすぐに実践していく。その繰り返しが、今の自分につながっていると思います。

塚本 今回のLIXILコンテストを通じて、そうした"横のつながり"の広がりも感じられましたか?

干川 はい。限られた時間なので住宅デザイン学校と同じとはいきませんが、SNSでつながった方もいます。
そうしたつながりがまた、新しい建築の刺激にもなりそうで、ワクワクしています。

「自分の建築」に出会うために。
挑戦が自信に変わる

塚本 最後に、これからこの記事を読んで「LIXILメンバーズコンテストに挑戦してみよう」と思う方に向けて、メッセージをお願いできますか?

干川 2013年、初めてコンテストに応募したきっかけは、先ほどもお話ししたダイクマトーヨー住器の大熊さんからの「出してみたら?」という一言でした。そしてその年に敢闘賞をいただき、それがとても嬉しくて、「もっと上を目指したい」という気持ちが芽生えました。

ただ2013年の受賞作は、クライアントの個性がとても強く出ていた住宅で、僕自身は「自分の建築」というよりも、クライアントの想いを再現したという印象が強かった。だから正直、嬉しさの反面、「自分は言われたものしかつくれないのでは」という戸惑いもありました。

ただ、コンテストに応募し「もっと上手くなりたい」「言われたままでつくる建築ではダメだ」と感じられたからこそ、「自分の好きな建築」が何かにたどり着けたと思 います。

何度も挑戦して、何度も結果に落ち込んで、でもそれを糧にして学び続けた先に、今回のグランプリ受賞があったと思っています。だから、これからビルダーを目指す人には、ぜひ恐れずチャレンジをしてほしいですね。どのような結果でも、それがきっと自信につながり、自分の財産になるはずです。

自分も負けてはいられません。2025年もまた挑戦したいと思っています。

塚本 ぜひ連覇、期待しています! 本日はありがとうございました。

管理建築士

ほしかわ工務店 代表取締役 干川 彰仁

経歴
1979年 群馬県高崎市に生まれる。シアトル国際短期大学卒業(Associate degree短期大学士取得) スノーボードと英語を使う仕事に就くため渡米したのち、カナダへ渡る。カナダにてCASI (Canadian Association of Snowboard Instructors)取得。ひょんな事から、カナダで林業や2×4の建物に触れ日本に帰国し、建築の道を志す。2002年 大工の修行に入り、並行して夜間に高崎建設高等職業訓練校 木造建築科へ入学。2005年 高崎建設高等職業訓練校 木造建築科卒業。