LIXILメンバーズコンテスト2023

Interview

土地の魅力を引き出す、心地よいデザイン

リフォーム部門 グランプリ グランプリ 受賞者インタビュー​ 松代建設工業 株式会社まつけんのリフォーム 黒岩卓郎さま

2023年、リフォーム部門グランプリを受賞した「M様邸 暮らしと仕事場をつなぐ家」を手掛けられたのは、松代建設工業 株式会社 まつけんのリフォーム。
担当されたお客様係の黒岩卓郎さんに、今回のコンテストへの想いと受賞作へのこだわりについてお伺いしました。

学生時代の旅で感動した名もなき職人の建物

自宅の改築に向けて、解体をした際の写真。

1953年に長野市で創業し、昨年で70周年を迎えた松代建設工業 株式会社。受賞者の黒岩さんは、前職は住宅に関わる仕事ではなく別の業種で働かれていたといいます。ですがご自宅の建設を松代建設工業にお願いしたことがきっかけで、自身も松代建設工業の一員となることを決めました。

改築後の黒岩さんの自宅写真。この改築をきっかけに松代建設工業に入社することに。

「10年ほど前でしょうか…。自宅を増改築いたしまして、その時にお願いしたのが松代建設工業だったんです。その時にとても親身にしていただき、まるで一緒に家を作り上げていくような過程にとても感動しました。最後の引き渡しの際には、みんなで涙をするほどの関係にまでなりましたね。顧客とそこまで深い関係になる仕事にものすごい魅力を感じました」と当時のことを振り返ります。

学生時代の野球チームで味わった人と関わり感動を共有する喜び

社会人になって所属していた野球チーム。後列右端が黒岩さん。

小学校の頃中学校高校とずっと野球をしていたという黒岩さんは、人と接し、チームで動く仕事への憧れを持っていたといいます。

「自宅を改築して以来、自分でもこの業界に携わりたいと思うようになりました。その時の松代建設工業の営業担当が今の私の上司なんですけれど、元々社会人になって入った野球チームで知り合いだったということもあり声を掛けていただいて、思い切って入社することに決めました」

4回目の応募で手にした念願のグランプリ

予算管理、日本家屋を活かしたデザイン、機能性向上が、本作がコンテストで評価されたポイントではと黒岩さんは分析。

黒岩さんが「LIXILメンバーズコンテスト」に応募をしたのは、今回が4回目。グランプリの受賞は兼ねてからの念願だったといいます。

「2年前の2021年開催のコンテストが準グランプリで、2022年のコンテストでは地域最優秀賞をいただいていて、設計や広報の方も含めて、今度は何とかグランプリをぜひ取りたいねっていう思いでいたので、結果として出て本当に良かったなというのは素直な想いです。信濃毎日新聞さんなどメジャーな新聞社の方にも取り上げていただいて、『新聞見たよ』っていうお客様がすごく増えたりましたね」

受賞後の反響の大きさに驚いたという黒岩さん。オーナーさんに住んでみての感想を伺い、資料を広報と一緒に作り込むなどコンテストの準備も入念に行ったという黒岩さん。そして今回の作品が受賞に至った決め手を次のように語ってくれました。

「やはり、ある程度抑えたコストの中で、私達作り手からしても無理ない範囲での性能向上プラス、デザイン性の向上ができたというのが一番ではないでしょうか。オーナーさんのご要望の実現と、古い日本家屋が持つ魅力を活かしたデザイン、そして機能性向上、その全てを予算内で叶えられたのが評価いただいたポイントではないかと思います」

コストと間取りのコントロールし仕事と生活のスペースを整理

リビング奥に設けた撮影スタジオスペース。庭側から入る自然光が心地よさを感じさせます。

今回、黒岩さんが手掛けたのは長野市郊外の床面積109.7坪の日本家屋のリフォーム。りんご畑に囲まれた古くからの住宅地で、カメラマンをされているオーナー様ご家族が、撮影スタジオとしても活用されているご自宅でした。

「リフォーム前のこちらのお家は、和の作りが特徴の日本家屋でしたが、居住空間と撮影で使う仕事のスペースが点在、混在していました。また、広いお家であるがゆえに、暖房効率も悪く、どのように生活すれば快適かを整理する必要がありました」

そのようにリフォームのポイントを挙げる黒岩さん。そしてオーナー様に、思い切って居住空間の整理を提案したといいます。

「そこで私たちが提案したのが、庭を中心にした、居住エリアと仕事場の整理と再構築です。元々は、居住エリアは西棟に、オーナーのお嬢様のお部屋だけ東棟に設けられている状態でした。しかし、お庭を中心に生活スペースと仕事スペースを集中させて、このエリアで生活も仕事も完結するように計画を進めました」

左のリフォーム前の間取り図では、居住エリア(ピンク)と仕事スペース(ブルー)が点在。右のリフォーム提案間取り図では、オレンジの部分に居住エリアと仕事スペースを集中。

上のリフォーム前の間取り図では、居住エリア(ピンク)と仕事スペース(ブルー)が点在。下のリフォーム提案間取り図では、オレンジの部分に居住エリアと仕事スペースを集中。

黒岩さんは当初、カメラマンさんというオーナー様の職業柄、もう少し仕事場と生活エリアの距離をとった方がいいのかなど、その塩梅に頭を悩ませたといいます。しかし、何回も打ち合わせを重ねるうちに、撮影でキッチンを使うこともあり生活エリアと近くても構わないことなど、オーナー様の求めるイメージを少しずつ共有できるようになったとのことです。

正面のリビングや右のスタジオからは、庭を眺められるような間取りに。

「また、古くからの日本家屋の風情は残したいという、オーナーさんのこだわりもあり、既存の木の温もりのある造作を活かし、リビング、廊下周り、玄関を仕上げました。そして断熱材は、ぎゅっとコンパクトにした生活・仕事スペースに集中して強化しました」

大胆にコンパクトにした空間の整理、そして既存の作りを活かした改築により、コストを抑えたリフォームができたと黒岩さんは語ります。

家づくりの原体験がコンテストでの評価に繋がった

このように何回も打ち合わせを重ね、オーナー様の意図と想いを汲み取り実現する家づくりに、黒岩さんは大きなやりがい感じるといいます。

「リビングにいる時のお庭の景色に癒される、家族の距離がグッと近くなり、一人暮らしをしていた娘も住みたいと戻ってきた。そういったオーナー様家族の声を聞くと、根気よくオーナー様とのコミュニケーションを重ねる仕事の仕方が間違っていなかったんだと感じます。私自身が自宅を改築した時の感動を、今度はお客様に感じてもらえればと思い日々研鑽していますが、今回のコンテストで受賞をいただいたのも、そうした仕事への取り組み方が実を結んだのかもしれません」

松代建設工業 まつけんのリフォーム、という社名がコンテストを通して多くの方へ広がっているという実感を噛み締めつつ、家づくりの原体験の感動を忘れずに、これからもお客様に寄り添っていきたい。控えめながらもどこか自信に満ちた表情で、黒岩さんは受賞の喜びを語ってくれました。

黒岩卓郎 黒岩卓郎
黒岩卓郎

松代建設工業 株式会社 まつけんのリフォーム お客様係。大学卒業後は建築業とは別の業界にて、B to Bによる業務に従事。自宅の改築をきっかけに、松代建設工業に入社。同社きってのリフォームアドバイザーとして、顧客に寄り添った家づくりを信条に掲げる。2021年にはLIXILメンバーコンテストのリフォーム部門準グランプリを、2022年には地域最優秀賞を受賞。