LIXIL メンバーズコンテスト プレミアムサロン2025
2025年12月1日(月)、LIXIL本社(東京・大崎)の
会議室NIGIWAIにて、
「LIXIL メンバーズコンテスト プレミアムサロン2025」を
開催しました。
全国13,000社以上(2025年11月時点)の工務店様、リフォーム店様が加盟するボランタリーチェーン「Good Living 友の会」会員様を対象とする「LIXIL メンバーズコンテスト」。1991年に創設され、お客様にとっての “いい住まい、いい暮らし” をいかに実現したかを競う、業界最大級の住宅施工例コンテストです。今回応募数は過去最高の1758社・3827作品(昨年比:+約400社・+約1000作品)と、さらなる発展を遂げています。
2023年よりスタートしたプレミアムサロンは、本コンテストにおいて優秀な成績を収められ、またコンテストの質向上にご貢献いただいた会員様をお招きする特別な機会です。ワンランク上の情報共有はもちろん、トップランナー同士の情報交換や関係構築の場、さらにはサードプレイス(心地よい場)となることを目指し開催しています。
第3回となる今回は、全国【18社】住宅事業者様より【26名】のトップランナーの方々が参加されました。
開会に際し、LIXIL Housing Technology 営業本部・田口和敏 常務役員本部長が登壇。「日本の住宅文化、町なみを豊かにする志のもと、地域のトップランナーが集う会」としてのプレミアムサロンの趣旨を改めて伝えました。また、2025年10月から始まった全LIXILアルミ商品への循環型低炭素アルミ「PremiAL」採用など、メーカーとして顧客価値の高い新商品の継続的な開発・提供を行う企業姿勢についても語られると、会場は一体感と拍手で満たされました。
期待感あふれる雰囲気のなか、特別ゲストによる講演がスタート。前回もお招きした建築家の伊礼智先生と三澤文子先生、さらに今回は慶應義塾大学名誉教授(一財)住宅・建築SDGs推進センター理事長 伊香賀俊治先生にもご講演いただきました。
先生方のお話からの感銘や触発を受け、続くワークショップでは現場で感じるリアルな課題やその解決策が参加者から寄せられ、業界の発展に向けた取り組みについて情報交換や認識を確認し合う貴重な機会となりました。
建築家/伊礼智設計室 代表
LIXIL メンバーズコンテスト新築部門審査員長
1959年 沖縄県生まれ
奥村先生は、吉村順三さんの右腕だった東京芸大の名誉教授で僕の先生です。まずは彼の仕事、師から教わったことをお話しします。
奥村先生の代表作である星野山荘は、建築自体は内外とも板張りで、素朴で綺麗なデザインでした。
空気と熱の動きの観点では、通常のポット式石油ストーブの煙突を少し改造しています。二重煙突にして、最頂部にシロッコファンを設置し熱を上から下に戻す流れを作り、暖気を床下に送り込んで床暖房としています。排熱を再利用するという意味で「再熱方式」などと呼び、家全体を暖房する試みでした。
パソコンのない時代。先生は、膨大な数のガラスの温度計を家中にぶら下げて、家全体の温度分布を自ら検証。気の遠くなるような話ですが、手作業で時間をかけて、自分が考えたことがきちんと動いてるかどうかを確かめる手間を惜しみませんでした。
かつてNCRという会社のビルだった建物は、虎ノ門に保存されています。おそらく日本初、省エネを狙いとしたダブルスキンのビルです。サッシ間の40cmのスペースは、排気とな
る内部空気を一旦入れて、外気と内部室温の間を取り持つ仕掛け。奥村先生は、三角形の敷地形状故に朝は東側、夕方は西側が非常に暑くなるという室温ムラの解消策としてダブルスキンを考えたようです。結果、3 割ぐらいの省エネになったそうです。
既製サッシはなく、建築家は自分で設計して作っていました。このサッシの40cmの隙間は熱交換の空気層でありつつ、人が歩けて、難ルートやメンテナンスにも使えます。常に彼は一石二鳥とか三鳥みたいなデザインをやっていたことも印象に残っています。
彼は家具職人でもありました。吉村順三さんの事務所にいたころ「吉村先生のデザイン感覚や設計には勝てない。先生と違うことをやろう」と思ったそうです。そして家具や温熱のデザインに注力するのですが、そのはまり込み方が常人とは違いました。
心地よい椅子デザインのために日本人の体格や重心を研究し医大の解剖の授業まで通ったり、椅子の曲率を割り出すための人形を作る際に重心についてNASAデータを照会したり。暖炉については、よく燃える暖炉の開口、奥行き、煙突の高さに関する方程式を導き出し、本を監修して出しています。
こうした奥村先生のとことん探求するスタンスが、空気集熱式ソーラーシステムの結実にもつながったということわけです。
奥村研究室でよく言われたこと、学んだことは、こんな風にまとめられます。
丸谷先生は、奥村先生のお弟子さんで僕の先輩、そして設計の師匠ですね。
11年間丸谷さんのところに勤めた僕が、丸谷さんらしいパッシブデザインとして紹介したいのが「吉井町の家」。群馬にあり、僕が辞める直前に担当した最後の住宅です。
ここで丸谷さんが考えたのはご老夫婦二人のための30坪余りの小さな家で、介護住宅として設計してほしいという要望でした。
まず、プランは最小限の動線で最大限の活動ができるよう計画しました。来客がないから玄関のための玄関は不要とし、真ん中に階段、階段の周りをぐるっと回るとどの部屋にも行ける。もちろん段差なく車椅子でも移動でき、最終的には 1階だけで生活が成り立ちます。旦那さんの書斎や、子ども家族が泊まるための和室もあります。
実は、元々は旦那さんの介護を想定していましたが、工事中に奥さんが倒れてしまわれて。僕が考えたのはとにかく車椅子対応にしようということ。床面はちょっと奮発してもらって強度の高いチークにしました。
そして、老後はできるだけランニングコストを落としたいので空気集熱式ソーラーシステムを採用し少ないエネルギーで床暖房をメインに全館暖房。ちなみに、集熱面に工夫をし、集熱効率が 10%ぐらい上がりました。太陽光発電が難しい晴れていない日は、(奥村先生の星野山荘で見ていただいた)ポット式石油ストーブで熱交換して排熱を利用することを考えました。お湯はお風呂で使います。
人にやさしい家であることも意識しました。仕上げは無垢板、そして珪藻土。当時、住宅建材として既製品はありませんでしたが、珪藻土で仕上げました。外壁はチャレンジした結果ヒビが入り補修のためミミズ腫れの様相となりましたが、建築系雑誌の取材も受けましたね。一方、歳をとると細かいことが面倒くさいので、建具の収まりにも気を配り、不自由になっても操作しやすいような収まりを考えました。雨でも駐車場から濡れず家に入れるよう、切妻屋根を活かした配慮もあります。
トイレには手洗い器ではなく汚物洗いを設置していますが、これは「(粗相があった場合に)介護される人が自分で洗うことができるように」という奥さんからのご要望でした。
この奥さんからのご要望に応えたくて、一生懸命綺麗な家をつくるように努めました。トップライトをゾロで収める、通常サッシに木枠を回して木製建具風に見せる、サッシのパーツを特別仕様として壁の中に引き込めるようにするなど、いろんな細かい工夫を施して仕上げています。
とても素朴で地味な家なんです。もう 30年経ちますが、先日見に行った時も綺麗に残ってましたね。
CO2 削減とか省エネについて10年ほど取り組んできましたが、最近つくづく思うのは、断熱と気密の性能を極限まで高めると、設備が驚くほど自由になるということです。たどり着いたのは「設備を小さくできる」という境地。余計なデザインをせずとも、長く住めるいい家ができる。自宅を含め、今はそんなチャレンジを続けています。
「下町の小さな家」は下町の密集地、約30坪の敷地に建つ延床25坪の小さな家です。第一に考えたのは「近所に迷惑をかけない」こと。周囲の採光を遮らないよう軒を出さず小さく作り、G2レベルの断熱と耐震等級3を確保しました。地盤が弱いため制振テープで変形を抑える工夫もしています。
外構は、ご近所との関係やメンテナンスを考慮して塀は設けず、曖昧な仕切りとして緑化フェンスを採用しました。植物の成長がとても早く、風景がどんどん変わっていくのが面白いですね。グリーンが、外からの視線を遮るスクリーンの役割も果たし、非常にうまくいきました。中からは外がよく見えますが、夜も外からは中が見えません。
一方、室内は壁掛けエアコン1台で全館空調のような環境を作ろうとしています。壁の通気の確保はもちろん、肝心なのは「リターン(空気が戻る経路)」。ここでは一階のエアコン上部に切り込みを入れ、二階の床にはガラリを設けて、階間からリターンを取ることを試しました。結果、冬場、設定温度20度でも家中どこにいても温かく過ごせています。空気が家全体を巡ってうまくいったので、これからの仕事に生かそうと思っています。
間取りは3人家族の平凡なプランです。ただ、家全体を小さくしても、ランドリーや水回りをゆったり作ることで日々の暮らしにゆとりが生まれます。また、東側の格子窓からは冬の間だけ光が差し込み、その光が消えることで春の訪れを感じる。太陽の動きをそのまま季節感として取り入れています。
この家で、「余計なことをしない」パッシブな住まいの可能性を実感しました。高性能な断熱・気密があれば現場でのちょっとした通気の工夫だけで高価な設備に頼らずとも快適な環境は作れると確信したいま、小屋裏をリターンの空間として活用する「i-works 6.0」の試作を進めています。
パッシブデザインの家づくりを再考した今、考えるのは、長く住み続けるために難しくない家づくりをしたいということです。すごく高性能の設備とかいうことでなく、住む人が理解できるような設備で、うまく住宅を設計したい。いまは、そんな悪戦苦闘をしています。